BLOGクリニックブログ

Medytox社のトレーニング~ボツリヌストキシン編~

韓国の美容皮膚科医と日本の美容皮膚科医

銀座たるみクリニック、院長の上野美律です。 前回の記事からの続きです。




トレーニングの後半は、ボツリヌストキシン製剤についてです。Hoon-young Kim先生の講義でした。先生は、去年参加したICLASという学会でもボツリヌストキシンについてご講演されており、その時にも大変勉強になりました。メディトックス社は、社名も「トックス」とついているように、ボツリヌストキシン製剤が主力であった会社です。日本ではアラガン社(アッヴィ社)のボトックスビスタのみ承認を取得していますが、世界中では多くの製薬企業からボツリヌストキシン製剤が発売されています。メディトックス社のスタンダードな製剤はニューロノックスですが、より進化したユニークなボツリヌストキシンを複数開発しており、世界シェアも高い企業です。特にユニークなのは、イノトックスとコアトックスです。



イノトックスとコアトックス

イノトックスですが、バイアルの粉となっている製剤を、生食で溶解して使用しますが、イノトックスははじめから液状になっています。溶解する時間と手間が省かれますし、多くのスタッフが治療準備に従事する際は、溶解するときの人為的なミスが予防でき、濃度も正確性が保たれることがメリットですね。

コアトックスはもっとユニークで、当院でも開院当時から採用しています。まず、製剤を長期間安定させるために、通常のボツリヌストキシン製剤には、ヒトアルブミン製剤がわずかに含まれます。しかし、コアトックスには含まれておらず、動物由来成分が全く含まれておりません。そのため、アレルギーの原因がより排除されている製剤です。宗教上の理由で一般的なボツリヌストキシンが使用できない方々にも、治療に使うことができるというお話も伺いました。

ボツリヌストキシン製剤は、美容領域でも多くの症例に対して使用されますが、整形外科領域、眼窩領域など疾患治療にも多く使用されているため、多くの患者様に貢献できている医薬品ではないかなと思います。また、ボツリヌストキシンの分子構造の中で、アクセサリータンパクという、必要な効果発現には影響しない部分があります。その部分が耐性獲得の原因になるのですが、このアクセサリー蛋白を可能な限り除去している構造になっているため、耐性獲得を予防するために有効と言われています。イギリスのイプセン社からもアクセサリータンパクが除去されている製剤が出ているのですが、ボツリヌストキシンの治療を評価するための標準薬剤とされるボトックスビスタよりも力価が低いというデータが出ており、使用する単位数計算も独自のため、少し扱いにくいという印象です。

コアトックスは、アレルゲンも耐性の原因も除去している製剤でありながら、ボトックスビスタと同様の使用が可能であり、力価の差が本当に少ない製剤のため、当院でも採用しています。ただし、残念ながら、日本ではまだ未承認のため、承認品と比較して、合う製材を使用しています。



講義を聞いて感じたこと

今回、講義を聞いて感じたことは、韓国の美容医療が薄利多売の傾向が強すぎて、今後の治療の方向性は、慎重に確認し、取捨選択するべきだなと感じました。それは、ボトックスの使用量の急激な増加です。今回の講義では、今まで25年治療に携わり多くの教育プログラムを聴講し、自分でも携わってきましたが、耐性の獲得について何度もトピックスが出てきたことが印象的でした。今までは美容領域では第1のリスクではなかったのは、整形外科領域のように大きな体の筋肉に使用することがないため、そういった治療と比べて美容領域での使用量はごくわずかだったからです。

しかし、韓国では、治療が安価になり、一度に多部位、多施術を行う傾向が進み、ボトックスも一度に多くの部位に治療をする傾向になり使用量が急激に増えているという業界の背景を察する内容でした。美容用のボトックスビスタではなく、整形外科領域で使用するボトックスの添付文書には、論文上証明されている推奨の上限使用量が明記されています。私は論文でも確認したことがあるのですが、おおむね1回の治療で最大400単位までとなっています。

韓国の先生方は、下腿、肩こり、育毛と一度に使用する容量が多い部位にも治療しつつ、顔の表情筋治療、メソボトックスも行うような患者様が多いようで、一度の投与量が300単位を超えることも頻繁に出てきているそうです。そのため、耐性を獲得する患者様の報告が増えているようで、しきりにその話をされていました。先ほどお伝えした通り、コアトックスが耐性を獲得しにくい構造になっているため、大容量の使用にはコアトックスを選択している、とおっしゃっており、なるほどなと考えさせられました。



私の美容医療の考え方

私の美容医療の考え方は、長寿の方が増えている現在、長く美容医療を取り入れることで、精神的な健康をサポートする医療となると信じて長く治療に携わっております。耐性を獲得してしまったら、ボツリヌストキシン治療を安心して継続できません。そのため、もちろんコアトックスの上記のような優れた特徴を理解して、未承認品はコアトックスのみの扱いにしているのですが、製剤に依存した治療メニューとなってしまうのは、患者様の選択の幅を狭めることになると考えます。

日本では、ボトックスビスタという、最も歴史が長く使われている製品が承認されています。データも多く蓄積されている安心できる薬剤の1つです。文献のデータも背景に、私の経験からも決めているのは、どのボツリヌストキシン製剤を使われるにしても(ディスポートは単位換算が異なるため除外します。)、1回の治療を100単位以内に抑えること、きちんと治療部位、治療内容に応じて適切な治療間隔を維持すること、これが患者様の安全を確保する私の中のベースラインです。

一人あたりの年間のボトックス使用量を200単位、もしくは多くても300単位としている、と前回のICLAS(韓国の学会)にてお話しされていたことも記憶しています。これに関しては、私も同意です。そんなわけで、ボツリヌストキシン治療は、古くて新しい治療だな、と感慨深くなりました。まだまだ医療は進化していきます。変化に取り残されないように、今後も主要な学会には、できる限り国内外聴講していこうと思います。






上野美律

上野 美律
銀座たるみクリニック院長

銀座たるみクリニック
URL : https://tarumiclinic.com/
instagram : https://www.instagram.com/g.tarumi/
電話受付 : 03-6264-1850
平日 10:00~18:00 土曜日 10:00~15:00
(休診日も上記日程はお電話つながります^^)

ブログカテゴリー

©銀座たるみクリニック(美容皮膚科) ALL RIGHT RESERVED.